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 そして。
「馬鹿な真似をして、キャス」
 私は、再び見舞いにやってきた、目に涙を浮かべるミシェリアさんの小言を頂戴した。ベッドの上で布団はかけていたけれど、正座をして聞いた。
「貴方まで死んでしまったら、私はこども達になんと言い訳すれば良いの」
「……すみません」
「皆さんに御心配をかけて、迷惑かけて。本当に、こんな事、ルーディだって望んでいないわ。貴方が生きていた事をあんなに喜んでいた、あの娘の気持ちを踏躙るつもりですか」
「……ごめんなさい」
「皆さんから貴方に何があったか、少しお話を伺ったけれど、危険な真似ばかりをして。貴方の立場もけっして良いものではないかもしれませんけれど、皆さんのお気持ちも少しは分かろうという努力をしないと、良くなるものも良くなりませんよ」
「……はい」
「今回はミカの為にもそうしようとしたのだろうけれど、結局、貴方のした事は、自分だけでなく他人も傷つけただけに過ぎません。よく反省なさい」
「はい。ごめんなさい」
 布団に顔がつくほど身体を二つに折って、頭を下げた。
「でも、貴方もそれだけ苦しんでいたのね。辛かったでしょう。こんなに痩せてしまって……戦を経験した事のない貴方が、目の前で人が死んでいく様を見て平気でいられる筈がないですもの。ましてや、すべてが自分の責任と思い詰めれば、尚更、逃げ出したくもなるでしょうね」
 私の頬を包む様に、ミシェリアさんの手が柔らかく撫でた。
「それで、ミシェリアさんは、どうしてここに? 誰かが知らせたのですか」
 私の根本的な質問に、ええ、と躊躇う表情が答えた。
「エスクラシオ元帥より、貴方が目覚めないからと伺って」
「そうだったんですか」
「それ以前に、ミカの事で訊きたい事があるからと呼ばれたのよ。その時に、貴方の事も聞きました」
 ぎくり、とした。
「美香ちゃんの事って、まさか、」
 会った事がバレたのか。ウェンゼルさんが本当は気付いていて、知らせたのか。それで、美香ちゃんが掴まった?
 私の危惧の前にミシェリアさんは、いいえ、と被りを振った。
「キャス、落ち着いてよく聞いて頂戴」
 改まった口調でミシェリアさんは言うと、膝の上に載せていた私の両手を自分の手で包み込むように握った。
「貴方が毒を飲んだのと前後して、ミカは亡くなったの」

 ……なんだって?




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